2011年1月16日日曜日

クーンババへ行く:ヒューマン対ガルー、生き残りをかけて

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● 生き残りをかけて:カンガルーの親子


 ここ数日、穏やかで雨も夕立あるいはにわか雨程度で雨量もない。
 グジャグジャだった地面も歩けるようになるまで回復してきた。
 もう大丈夫だろうと出かけることにした。
 今年になって買い物以外で外に出たのは2,3日前に内海の水位を見にいったのが唯一。
 大晦日はボタニックガーデンへ行ったので、今日は手近のクーンババ・レイクランドにする。

 まずはデッキウオーク。
 デッキが設えられているということはここが低地であるということ。
 でも、ここの乾燥陽気では普段は地面が見えている。
 が、昨今の雨でデッキの下には水面が広がっている。
 長雨だったので、タップリ大地は水を含んでいるから、水が引けるのには相当な時間が必要だろう。
 左右が笹の部分は、この成長がすさまじく、まるで腰壁のようにデッキをおおっている。








● デッキウオーク


 この地方には3種類の「オーストラリアムシクイ」が生息している。
 ムナグロ(胸黒)、ルリ(瑠璃)、セアカ(背赤)、である。
 クーンババ(Coombabah Lakelands)ではこの3種類すべて見ることができます。
 と言っても運が良ければの話。
 今日出会ったのはムナグロである。
 何しろ小さい鳥。
 コンデジ最大望遠(270mm)でオートにして撮るから、ほとんどピンボケ。






● ムナグロオーストラリアムシクイ(オス)

 オーストラリアムシクイはオスが華やかでメスは地味。
 オスが捕食される確率が高く、ために数が少なく、種保存の立場から乱交になる。


● ムナグロオーストラリアムシクイ(オス):Wikipediaより

 観ているとわかるが、オスは足早というかあっちっこちとせわしくを跳び回るが、メスは割合に近くを短く跳び回って、時に一つの場所に留まってくれているときがある。
 よって、クーンババで最も出会う確率の高いムシクイはムナグロのメスになる。
 しかし、どうしてもカメラは華やかなオスを追ってしまう。
 でも、これを撮ることはちょっと面倒。


● ムナグロオーストラリアムシクイ(メス)


 ルリオーストラリアムシクイはいろいろなクリークで観察できるこの種の中では最もポピラーな種類。


● ルリオーストラリアムシクイ:左がオス、右がメス(Wikipediaより)


 セアカオーストラリアムシクイはなかなか出会えない鳥。
 でも、ここクーンババには間違いなくいます、以前会ったことがありますから。
 おヒマなら脚を運んでみてください。

 「セアカ」で思い出すのは「セアカゴゲグモ」。
 いっとき関西地区を震撼させた毒グモ。
 完全駆除宣言を出したがしぶとく生き残り、中京都市まで北上しているとか。
 めざすは東京制覇だろう。
 こちらでは通称「レッドバック(Red-back widow spider)」と呼ばれている。
 同じオーストラリアでもメルボルンではまったく見られないクモだともいう。
 ということは寒さの厳しい日本では、さほどに繁殖はしないということだろうか。
 毒性は弱く、あまり心配するほどの事はない、ということになったが、しかし「迷惑な進化」によれば突然変異というのは生物の体内で日常的に行われているという。
 とすれば、湿度の高い日本でレッドバックが突然変異して毒性が強く、かつ寒さに強いという特性を身に付けるということは十分考えられる。
 油断大敵である。

 セアカオーストラリアムシクイの正式名称は「Red-Backed Fairy-Wren」.
 そうこれも「レッドバック」なのです。
 でも、毒性に関する話は聞いたことがありませんから安全だと思いますが。
 Wikipediaからその写真を載せておきます。


● セアカオーストラリアムシクイ(オス)


オーストラリアムシクイ亜科の下に「オーストラリアムシクイ属」と「エミュームシクイ属」がある。
 エミュームシクイはこの地域を生息域にしていますが、オーストラリアムシクイが13センチほどに対して、その名の通り大きく20センチとあり、形態が違うようです。)


 今日はもう一つ鳥を見ました。
 ヒガシキバラヒタキ(東黄腹ヒタキ):Eastern Yellow Robin.
 オライリーリゾート(ラミントン国立公園)なら野鳥のくせに、ほんのそばまで来て止まってくれる鳥。
 山にいる鳥だとばかり思っていたが、ここにもいた。
 知らなかった。






● ヒガシキバラヒタキ(東黄腹ヒタキ):Eastern Yellow Robin.
 
 最初のビデオはピンボケ。
 オートなので、遠景に焦点を合わしてしまうようである。



 次のはまあまあ焦点は合っている。 




 クーンババ保全地域というのは簡単にいうとカンガルー放牧地域。
 街の開発によって住地を追われたカンガルーを引き取っているところ。
 昔、といっても十年少々まえのことだが、ちょっと郊外にはカンガルーが群れていた。
 そこがいつの間にか開発され、、行き場を失ったカンガルーが幹線道路でよく轢かれていた。
 とりあえず引き取った場所がここクーンババ。
 あれ!、と思ったら周囲にネットフェンスが張られ、カンガルーが街に出歩かないようになってしまった。
 言い換えればカンガルーの聖地であり、言葉を違えればカンガルーの牢獄。
 ですからもしカンガルーが見たいとお思いならここへ来てみてください。
 確率9割で野生のカンガルーに出会えます。
 もちろん入場無料です。
 つまるところカンガルー保護エリア。
 よってこの地はカンガルー支配されているといってもいい。
 カンガルーと生態の合わない生物はここには住めない。
 動物も植物も。

 今日出会ったのは下のカンガルー。
 お腹の袋に子どもが入っている。







 カンガルーはその支配力をもって生息地を征服する。
 それに逆らうものは住むことを許されない。
 カンガルーに対抗するにはそこそこのパワーがいる。
 ライオン、トラ、豹などは肉食獣だが、ここにはいない。
 よってカンガルーの天下。
 天上天下唯我独尊。

 が、烈火のごとく怒り狂う生き物がまだいた。
 その生き物とは「人間」。
 カンガルーの食欲の前には丹精込めた農作物が消えてなくなる。
 そこで人間は年間で「350万頭」というとてつもない数のカンガルーを殺す。
 この数、横浜市の人口に匹敵する。
 大阪を抜いて現在、東京の次に君臨する都市。
 そこの人口と同等数のカンガルーが毎年殺されていることになる。
 なぜなら、このまま放置するとその繁殖力の旺盛さで、この国は「サルの惑星」ならぬ
 「ガルー大陸
になりかねないからである。

 ここでは人類生存の裏で常にもうひとつの戦争が繰り広げられている。
 「ヒューマン 対 ガルー
 カンガルーとは人間にとって「害獣」であり、「敵獣」なのである。
 ここの人口「2千万人」。
 毎年殺されるカンガルーが350万頭とすれば、大陸総人口の1/6に匹敵するカンガルーが毎年、人間生存のために抹殺されているのである。
 つまり、6年たてば人間はこの地から消滅してしまうという数である。
 この無謀な生き物をこのまま放置すれば、人間はこの大陸から駆逐されてしまうのである。
 生きるとは綺麗事ではない。
 食うか食われるかである。
 
 では、本当にカンガルーを食っているのは誰?
 カンガルーの肉は鳥のササミのようにサッパリしている。
 が、人間はあまり食わない。
 年間350万頭といったら膨大な数。
 この死体の最終処理はどこ?
 犯人は犬とネコ。
 高級なドッグフードとキャットフードの原材料はカンガルーなのです。
 もしこの世にカンガルーがいなかったら
 日本の犬とネコはいまだに、残飯にニボシの味噌汁をぶっかけた
 ネコマンマが主食

だった、ということもありえたのです。
 感謝感謝のカンガルーなのです。
 もし、ペットフードをお使いなら、そのかわいいペットのために年に一回
 「カンガルー供養」
をしないといけません。
 妖怪「ガルー」は恐ろしいです。
 あのマイク・タイソンがびびるというハードパンチャーです。
 カンガルーは犬ネコにとってかけがえのない貴重なタンパク源なのです。
 「カンガルー 対 人間・犬・ネコ連合群」。
 カンガルーは孤独の闘いに健気に挑んでいるのです。


● カンガルーにもう一度感謝しましょう


 今日は日曜日。
 平日より人出があった。
 ジョガーが一人、バイカーが一人、初老のご夫婦一組、子供を三人つれたファミリーが一組。
 計9人の人に出会った、1時間半ほどの間に。
 夏休みはあと一週間ほど。
 今年の夏休みは子どもたちにとっては、ちょっと残念な思い出になってしまうだろう。



[◇ 1月19日]
 ハーバータウンでの買い物の帰り、気になったので寄ってみた。
 運よく「ルリ(瑠璃)オーストラリアムシクイ」に出会った。
 先に述べたがオーストラリアムシクイの中ではひじょうにポピラーな鳥で美しい。
 きびきびした動作はまさに「キュート:cute」。





 ポピラーということは繁殖力が強いということであろう。
 人をあまり恐れず結構近くまでくる。
 楽しませてくれる鳥である。
 よって、ビデオもちらりと撮れた。



 鮮やかなブルーが印象的だが、ルリの場合はそれが頭部のみ。
 だが、身体全体がブルー系のムシクイがいる。
 Splendid Fairy-Wren :ムラサキオーストラリアムシクイ
 「紫」である。
 ムラサキというより腹の部分が「青紫」で、これからつけられた名前だろうと思う。
 この鳥、内陸部から西オーストラリアにかけてで、どういうわけか東海岸にはいない。
 一度会ってみたいのだが。



● ムラサキオーストラリアムシクイ:Wikipedia より


 さて、3種のムシクイのうち残るは「レッドバック」。
 これは、ちょっと出会いが難しい。
 もし運あってご対面できて、写真が撮れたらご報告します。



[◇ 2月24日]
 レッドバックを求めてまた出かけていった。
 いた。
 遠い。



 中央下左にいるのがメス。
 オスはシャッターを切る直前に逃げられた。
 撮れるまでしつこく追いかけるしかあるまい。


 代わりに撮ったのがこの鳥。


● Red-Browed Finch :フヨウチョウ(芙蓉鳥)

 オライリーリゾート(ラミントン国立公園)なら餌場に群れている鳥。
 それがクーンババにいた。

 ちなみにメジロも撮りました。
 これはちょっと出会いの難しい鳥。
 普通に見ているかぎりではメジロだと分からない鳥。
 写真にとって引き伸ばし「ああ、メジロだったんだ!」と感激する鳥。
 





● Silvereye :ハイムネメジロ(灰胸メジロ)


 でもやはり、本命はレッドバック(セアカムシクイ)です。
 これを撮らないことには話にならない。
 ちなみに今日から学校が始まりました。
 午前中でしたが出会った人は、バイカーが2人。




 [かもめーる]



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